2 治安の確保 > CHAPTER V. テロ対策
2 治安の確保
CHAPTER V. テロ対策
世界各地において、イスラム過激派やその思想に影響を受けたとみられる者等によるテロ事件が多発しており、アジア諸国においてもISIL等によるテロが相次ぐなど、国際テロの脅威が継続しています。さらに、ドローンを使用したテロ等、新たなテロの脅威への対策も重要な課題となっています。
海上保安庁では、巡視船艇・航空機による監視警戒、関連情報の収集、関係機関との緊密な連携による水際等でのテロ対策に加え、海事関係者や事業者等に対して自主警備の強化を働きかけるとともに、不審事象の情報提供を依頼するなど、官民一体となったテロ対策を推進し、より一層テロの未然防止に万全を期していきます。
令和6年の現況
海上保安庁では、巡視船艇・航空機による原子力発電所や石油コンビナート等の重要インフラ施設警戒のほか、旅客ターミナル・フェリー等のいわゆるソフトターゲットにも重点を置いた警戒を実施しています。
また、国際テロ等を未然に防止するために、人及び物の流れの拠点である港湾においてテロ対策をはじめとする保安対策の一層の強化を図っており、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」に基づく通報のあった、外国からの入港船舶1,986隻に対して立入検査を行いましたが、テロとの関連が疑われる船舶は認められませんでした。国際港湾においては、港湾危機管理官を中心に、警察、入管、税関、港湾管理者等の関係機関や港湾関係者と緊密に連携しながら、不審事案発生時に備えた合同訓練や港湾保安設備の合同点検等、間隙のない水際対策に取り組んでいます。
このほか、海上や臨海部において、皇室と国民との親和に配慮し、天皇皇后両陛下や皇族方の警衛を行うとともに、国内外の要人の警護及び国際会議等の行事に際して警備実施を行い、テロ等違法行為や不測の事態の未然防止に取り組んでいます。
 原発警戒
 関係機関との合同訓練
新たな脅威への対応
近年、世界各国でドローンを用いたテロ事案等が発生しており、我が国においてもそのような新たなテロの脅威に対し、「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」等を適切に運用して未然防止を図っているところです。海上保安庁においては、関係機関と連携して不審なドローンの飛行に関する情報を把握するとともに、ドローン対策資機材を活用するなど、複合的な対策を講じています。
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けて
大阪・関西万博は、世界中の国や国際機関が参加し、国際的に注目を集める大規模なイベントであり、国内外の要人及び多数の来場者が見込まれています。四方を海に囲まれた阪神港大阪区の人工島である、夢洲が会場となっていることから、海上における警備や海上交通の安全確保が極めて重要です。
海上保安庁では、大阪・関西万博の開催を見据え、開催地の周辺海域を管轄する第五管区海上保安本部を中心に、テロ対策に係る海上警備等について検討を重ね、令和6年4月以降、本庁及び第五管区海上保安本部に2025年日本国際博覧会準備本部を設置し、平素からの取組を強化するとともに、装備・資機材の増強整備や関係機関との連携訓練、海事・港湾事業者等へのテロ対策啓発用ポスター・リーフレットを活用した自主警備強化に係る呼びかけ・指導など、所要の準備を行いました。
令和7年3月には、本庁及び第五管区海上保安本部に設置していた準備本部を対策本部に改組し、全庁一丸となって国内外におけるテロ事案等の最新の警備情報や地域特性等に応じた海上警備体制を構築するなど、徹底したテロ対策を行っています。
官民一体となったテロ対策の推進
公共交通機関や大規模集客施設といった、いわゆるソフトターゲットを標的としたテロは、日常の身近なところで発生する可能性があるため、この対策には国民の皆様の理解と協力が不可欠です。
このため、海上保安庁では、官民が連携したテロ対策の推進に力を入れており、臨海部のソフトターゲットである旅客ターミナルやフェリー等の海事・港湾事業者等とともにテロ対策を進めています。
平成29年度から、官民が参画する「海上・臨海部テロ対策協議会」を開催し、官民一体となってテロ対策について議論・検討しており、令和6年度においては、「内航旅客船等テロ対策マニュアル作成の手引き」を策定し、内航旅客船事業者に配布・指導を行うことで、自主警備強化を啓発しました。また、大阪・関西万博開催に向け、同協議会にて「テロ対策啓発用ポスター」や「テロ対策啓発用リーフレット」を作成し、各協議会メンバーで周知するなどして活用したほか、G7広島サミットにおけるテロ対策の取組を振り返り、大阪・関西万博における、さらなるテロ対策の強化策等について議論を重ねました。
 海上・臨海部テロ対策協議会の状況
 テロ対策啓発用ポスター
 テロ対策啓発用リーフレット
今後の取組
海上保安庁においては、今後もテロが現実の脅威であるとの認識の下、テロの未然防止やテロ発生時の対処にかかる体制を確実に整備していくとともに、関係機関や事業者等とより緊密に連携し、官民一体となってテロ対策に取り組んでいきます。
|