
PROLOGUE
我が国は四方を海で囲まれ、海を介して周辺国と接しています。その海を活動の舞台とする海上保安庁では、これまで諸外国との連携の中で業務を遂行してきました。
海上保安庁が設置された1948年当時の重要課題は、密輸・密航が横行し、機雷が残存しているような「暗黒の海」と化していた我が国周辺海域の安全及び治安を確保することでしたが、1996年に発効した「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)」により、海上保安庁の活動範囲は広大な海域へと拡大しました。
この間、経済活動のグローバル化によって、人・モノ・金の流れがよりダイナミックとなり、海賊や薬物密輸、密漁といった海上犯罪が容易に行い得る環境が生まれました。また、科学技術の発展に伴い海洋資源開発が現実のものとなり、海洋権益を巡る国家間の対立が多発するなど、沿岸1か国のみでは対応することが困難な問題が生じるようになりました。
このように、海に関する問題が地球規模に拡大する中、「平和で美しく豊かな海」を次世代に継承するためには、平和と治安の安定機能としての役割を担う海上保安機関が世界的に連携・協力して対応することが必要不可欠です。
こうした背景を踏まえ、海上保安庁では、諸外国の海上保安機関との間で、多国間・二国間の枠組みを通じ、海賊、不審船、密輸・密航、海上災害、海洋環境保全といったあらゆる課題に取り組み、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP: Free and Open Indo-Pacific) 」の実現に向けて、法の支配に基づく海洋秩序の維持・強化を図るとともに、シーレーン沿岸国の海上保安能力向上を支援するほか、国際機関と連携した様々な取組を行っています。