海に関して、関係各国が連携・協調しつつ、各国が有する知識・技能を世界共通のものとしていくため、様々な分野の国際機関が存在します。海上保安庁では、様々な業務を通じて得られた知識・技能を活かし、国際社会に貢献するため、これらの国際機関の取組に積極的に参画しています。
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8 海をつなぐ
CHAPTER III. 国際機関との協調
海に関して、関係各国が連携・協調しつつ、各国が有する知識・技能を世界共通のものとしていくため、様々な分野の国際機関が存在します。海上保安庁では、様々な業務を通じて得られた知識・技能を活かし、国際社会に貢献するため、これらの国際機関の取組に積極的に参画しています。 1 国際海事機関(IMO)での取組
IMOは、船舶の安全や船舶からの海洋汚染の防止等の海事問題に関する国際協力を促進するために設立された国連の専門機関で、現在175の国が正式加盟国、3地域が準加盟となっています。 令和5年には、IMOの委員会である海上安全委員会(MSC)、その下部組織である航行安全・無線通信・捜索救助小委員会(NCSR)及び海洋環境保護委員会(MEPC)、MEPCの下部組織である汚染防止・対応小委員会(PPR)等に出席し、航行の安全及び船舶からの汚染の防止・規制に係る事項等の国際議論に貢献しました。 和歌山県潮岬沖における新たな推薦航路の運用開始
〜船舶交通の安全をより一層確保するために〜 令和4年11月、国際海事機関(IMO)の第106回海上安全委員会において、我が国が提案した和歌山県潮岬沖における推薦航路が採択されました。 推薦航路とは、海上人命安全条約(SOLAS条約)第X章第10規則に基づき、IMOが指定する航路の一つで、航路の中心線を定め行き会う船舶が進行方向の右側を航行するよう推奨することで、船舶交通の整流化を図るものです。 和歌山県潮岬沖の推薦航路は、我が国で2例目となる航路であり、令和5年6月1日午前9時(日本時間)から運用を開始しました。 なお、推薦航路の運用開始に伴い、航路の各基点にバーチャルAIS航路標識(船舶の航海用レーダー画面上に航路標識が実在するかのように表示させるシンボルマーク)を明示するとともに、海図にも掲載することで、船舶の運航者が推薦航路を認知できるようにしています。 和歌山県潮岬の沿岸は、東京湾、伊勢湾、大阪湾などを結ぶ海上交通の要衝で、外国船舶を含む船舶の通航量が多く、加えて漁業活動も活発な海域ですが、推薦航路の設定により安全性の向上が期待されます。 海上保安庁では、引き続きAISを活用した航行安全システムを運用し、船舶交通の安全確保に努めていきます。 2 国際水路機関(IHO)での取組
IHOは、より安全で効率的な航海の実現のため、海図などの水路図誌の国際基準策定、水路測量技術の向上や各国水路当局の活動の協調を目的とし昭和45年に設立された国際機関で、現在99か国が加盟しています。 令和5年4月には、IHOの最高意思決定機関である第3回総会がモナコで開催されました。我が国はIHOの運営や計画に係る重要議題について積極的に発言し、日本のプレゼンスを示すとともに、IHO活動方針の決定に貢献しました。 また、令和5年7月には、海上保安庁海洋情報部長がIHO理事会副議長に選出されました。同年10月に開催された第7回IHO理事会では、副議長である海洋情報部長が次期IHO戦略計画の策定に向けた調整を担うことで合意されたほか、理事国として出席した我が国は、航海安全情報の策定やIHO事務局業務のデジタル化などのIHOの重要な施策について検討する複数の作業部会への参加を表明しました。 このほかにも、令和5年6月には、IHO内で地域間の調整を行っている地域間調整委員会(IRCC)及びキャパシティビルディング小委員会(CBSC)の会議を初めて日本で開催するなど、IHOの会議運営にも貢献しています。 また、IHOは、地域的な連携の促進や課題の解決のため、世界の各地域に地域水路委員会を設置しています。海上保安庁は東アジア水路委員会(EAHC)に昭和46年設立当時から加盟し、常設事務局として議長国を支援しながら、50年以上にわたり水路測量や海図作製に係る域内の技術向上や航海安全に取り組み、EAHCの活動や運営に尽力しています。 令和5年には、IHOとユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が共同で設置し、世界の海底地形名を標準化する「海底地形名小委員会」が開催され、日本提案の海底地形名11件が承認されました。同委員会では、海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室長が議長を務めています。 第3回IHO総会の様子 第7回IHO理事会の様子 3 国際航路標識協会(IALA)での取組
IALAは、航路標識の改善、船舶交通の安全等を図ることを目的とした国際的な組織で、現在89か国の国家会員その他工業会員等が加盟しています。また、そのうち24か国は理事国に選任され、国際基準等の承認手続きを行っており、日本は昭和50年から理事に選任され、令和5年に開催された総会でも再選を果たしたことにより12期連続での選出となりました。加えて、IALAの常設技術委員会の一つであるデジタル技術委員会(DTEC)委員会(令和5年にENAV委員会から改称)議長に交通部企画課国際・技術開発室専門官が、平成28年から就任しています。これは航行援助分野における国際活動に対する海上保安庁の取組及び同委員会議長としてのこれまでの実績が評価されたものです。 国際航路標識協会(IALA)の総会等への参加およびIALA会合の東京開催
1.令和5年6月3日、4年に一度開催されるIALA総会がリオデジャネイロ(ブラジル)において開催され、3名の職員が参加しました。海上保安庁は昭和34年にIALAに加入し、昭和50年に初めて理事として選出されて以降、同ポストを獲得し続けており、この度の総会での再選により12期連続で理事を務めることとなりました。また同日、総会後の新たな理事による理事会が開催され、常設技術委員会の1つであるデジタル技術(DTEC)委員会議長(ENAV委員会からこの度の理事会で改称)に当庁職員が再選されました。 2.近年の加盟国増加及び新技術の発展に対応する航行援助分野の国際標準化の重要性の増大を背景に国際機関としての地位を確立することの必要性が認識されるようになり、IALAは令和2年国際航路標識機関条約案を採択しました。これに関連して、令和5年11月7日〜10日の間、海上保安庁の主催のもと、同条約に基づく機関の運営に関する規則案を作成する会合を東京で開催しました。 当庁職員によるプレゼンテーション IALA総会の様子 海上保安庁長官開会挨拶 IALA会合東京開催の様子 4 アジア海賊対策地域協力協定・情報共有センター(ReCAAP−ISC)での取組
アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)とは、我が国の主導で締結されたアジアの海賊・海上武装強盗問題に有効に対処するための地域協力を促進するための協定です。この協定に基づき、情報共有、協力体制構築のため、平成18年にシンガポールに情報共有センター(ISC)が設立されました。設立以来、海上保安庁は、このISCへ職員1名を派遣し、海賊情報の収集・分析・共有及び法執行能力向上支援を積極的に推進しており、令和5年9月には、締約国の海賊対策担当組織幹部等が出席する会議「Capacity Building Executive Programme(CBEP)」(シドニーで開催)に参画するなど、アジア地域における海賊対策に係る各種取組を推進しています。 Capacity Building Executive Programme(CBEP)の様子 5 北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)での取組
NOWPAPは国際連合の機関である国連環境計画(UNEP)提唱のもと、閉鎖水域の海洋汚染の管理及び資源の管理を目的とした地域海計画(RSP)の一つで、北西太平洋地域4か国(日本、韓国、中国及びロシア)により採択されています。海上保安庁は、この計画の中でデータ情報ネットワークに関する地域活動センター(DINRAC)、海洋環境緊急準備・対応に関する地域活動センター(MERRAC)において会合等に参加し、同地域の海洋汚染の防止および海洋環境保全のための取組に積極的に関与・貢献しています。 研修での説明の様子 6 国連薬物・犯罪事務所(UNODC)との連携
UNODCはグローバル海上犯罪プログラム(GMCP)を通じて、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を推進するため、インド太平洋地域において、海洋状況把握(MDA)の能力強化に関する技術支援等を提供しており、海上保安庁はそのプログラムの1つであるMDA研修に、2022年から職員を講師として派遣しています。 令和5年度は東南アジア及び太平洋島嶼国にて海上法執行機関に対して当庁のMDAに関する取組事例を交えた研修を実施し、令和5年12月にはインドネシアで航空機を活用した研修を初めて行いました。また同年6月には東南アジアの海上法執行機関職員を本邦へ招へいのうえ、MDA担当者訪日プログラムが開催され、JAXA筑波宇宙センターでの施設見学等に加え、海上保安庁からは業務説明等を実施しました。 他にもUNODC-GMCPへの協力として、同年7月にMCTを派遣して船舶移乗・立入検査訓練をスリランカで実施したほか、同年8月には職員を講師として派遣しデジタルフォレンジック研修をインドネシアで行うなど継続的な協力、支援をしています。 当庁航空機を活用した研修の様子 船舶移乗訓練の様子 |