平成13年に発生した米国同時多発テロ以降、各国が協調してテロ対策を進めていますが、平成27年には、シリア、チュニジア等において、邦人がテロの犠牲となる事案が発生し、ISILが日本を含む各国をテロの標的として名指ししている中、平成27年11月にはフランス・パリで、平成28年3月には、ベルギー・ブリュッセルにおいて連続テロ事案が発生するなど、現下のテロ情勢は非常に厳しい状況にあります。我が国においても、テロは現実の問題として、緊張感を持って未然防止や対処能力の向上に取り組む必要があります。
海上保安庁においては、関係機関や地域との緊密な連携のもと、官民一体となってテロ対策に取り組んでいます。
平成27年の現況
海上保安庁では、原子力発電所や石油コンビナート等の臨海部重要施設に対して、巡視船艇・航空機による監視警戒を行っているほか、多くの人が集まる旅客ターミナル、フェリー等のいわゆるソフトターゲットに重点を置いた監視警戒を実施しております。また、事業者等に対する自主警備の徹底、乗客等に対するテロへの危機意識の向上や不審事象の早期通報の呼びかけ、合同テロ対策訓練の実施等、関係機関や地域との緊密な連携のもと、官民一体となってテロ対策に取り組んでいます。このほか、平成27年は、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(国際船舶・港湾保安法)」に基づき、外国からの入港船舶2,194隻に対して立入検査を行いましたが、テロに起因するような保安上問題のある船舶は認められませんでした。
また、伊勢志摩サミット及び関係閣僚会合を見据え、平成27年6月には海上保安庁及び首脳会議開催地の周辺海域を管轄する第四管区海上保安本部に海上警備準備本部を、また関係閣僚会合開催地の周辺海域を管轄する各管区海上保安本部にも同様の準備本部を設置し、海上警備の準備を進めるとともに、開催が迫る平成28年3月には海上警備対策本部に改組し警備体制に万全を期しているほか、全国の臨海部における警戒対象施設についても警戒を強化するなど徹底したテロ対策を行っています。
特に、伊勢志摩周辺は、大小の島々に囲まれた入り江や浅瀬のある複雑な海域であり、真珠養殖等の漁業活動が活発な海域であるなど、警備をするにあたり様々な配慮が必要となることから、警察等関係機関や地元住民と緊密に連携し、テロの未然防止に万全を期すことにしております。
さらに、平成32年開催予定の東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、会場の多くが臨海部に設置される予定であることや、世界中から要人や観客等が集まることが予想されることから、海上におけるテロ対策が極めて重要であり、海上保安庁及び第三管区海上保安本部では、大会準備本部を設置するなどして、テロ対応体制の確立に向けた準備を推進しています。
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サミット会場周辺海域 |
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海上保安庁伊勢志摩サミット等 海上警備対策本部設置(1) |
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海上保安庁伊勢志摩サミット等 海上警備対策本部設置(2) |
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今後の取組み
パリにおける連続テロ事案の発生等、ますます深刻化する国際テロ情勢をふまえ、平成27年12月4日、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部において「パリにおける連続テロ事案等を受けたテロ対策の強化・加速化等について」が策定されました。
海上保安庁においては、これらの決定等をふまえつつ、国内の治安を確保するために、引き続き、関係機関や地域との緊密な連携のもと、官民一体となってテロ対策に取り組んでいきます。