四面を海に囲まれた我が国は、海洋国家として海から様々な恩恵を受け豊かな発展を遂げてきました。この広大な海において、時に厳しい気象環境の中、海上保安庁は創設以来、海上で発生するあらゆる事象に対応し、国民の皆さんが安全・安心に暮らすことができ、この豊かな海を後世まで引き継ぐことができるよう、領海警備、海洋の秩序維持、海難の救助、海上防災、海洋環境の保全、海洋調査、海上交通の安全確保等に従事しております。
特に、我が国の周辺では、尖閣諸島周辺海域における外国公船の接近や領海侵入が繰り返され、また、外国海洋調査船による我が国の同意を得ない海洋調査活動も活発化するなど、我が国の主権が脅かされるような事案が発生しております。
海上保安庁では、特に国境離島や遠方海域での対応に必要な体制整備を推進してきたところ、平成28年2月には、大型巡視船14隻相当からなる尖閣領海警備専従体制を確立させました。これらの適時適切な運用をもって、我が国の領土・領海を断固として守り抜くとの方針の下、事態をエスカレーションさせないよう、冷静に、かつ、毅然として対応してまいります。
また、このような情勢の中では、「海における法の支配」こそがアジアの海の平和と安全に大いに貢献すると考えられます。
海上保安庁では、昭和30年代からアジア各国の海上保安機関に対し、航行安全に関わる技術支援を行い、海上防災、捜索救助、海賊対策や密輸密航の取締りといった法執行の分野にまで能力向上支援の幅を広げており、海洋の安全確保に向けた連携協力を図るため、海上保安分野の国際的な人材育成にも力を入れて推進しているところです。
そこで、海上保安レポート2016では、「法治平安の海を護る」と題して、尖閣諸島周辺海域における領海警備の状況、我が国の排他的経済水域において発生している外国漁船や外国海洋調査船の不法活動への対応、アジア各国海上保安機関との連携・協力や技術的支援の状況について特集を組み紹介することとしました。
本書を手に取ってお読みいただき、海上保安庁に対するご理解をより一層深めていただければ幸いです。