海上保安庁では、海上交通の安全確保を図るため、海上交通ルールを遵守するように指導を行っており、特に、船舶交通がふくそうする海域においては、航路を閉塞するような社会的影響が著しい大規模な船舶事故の発生数を「ゼロ」とすることを目標として、海上交通センターにおいて24時間体制で的確な情報提供や航行管制を行い、船舶事故の未然防止に努めています。
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7 海上交通の安全を守る
CHAPTER II. ふくそう海域・港内等の安全対策
海上保安庁では、海上交通の安全確保を図るため、海上交通ルールを遵守するように指導を行っており、特に、船舶交通がふくそうする海域においては、航路を閉塞するような社会的影響が著しい大規模な船舶事故の発生数を「ゼロ」とすることを目標として、海上交通センターにおいて24時間体制で的確な情報提供や航行管制を行い、船舶事故の未然防止に努めています。 船舶交通がふくそうする東京湾・伊勢湾・名古屋港・大阪湾・備讃瀬戸・来島海峡及び関門海峡での船舶事故隻数は677隻と、船舶事故全体の約4割を占めています。これらの海域で事故が発生した場合には、航路の閉塞や交通の制限により物資輸送が滞ることで、国際貨物輸送の99%以上(重量ベース)を海上輸送に頼る我が国の経済活動に大きな影響を及ぼします。海上保安庁では、ふくそう海域等での海上交通の安全を確保するため、次の取組を実施しています。 1 海域毎の交通ルール及び安全対策
海上の交通ルールには、基本的なルールを定めた「海上衝突予防法」のほか、特別なルールとして東京湾・伊勢湾・大阪湾を含む瀬戸内海に適用される「海上交通安全法」、法令で定める港に適用される「港則法」があります。海上保安庁では、これらの法令を適切に運用することで、海上交通の安全確保を図っています。 ふくそう海域における安全対策
海上交通の要衝となっている東京湾・伊勢湾・名古屋港・大阪湾・備讃瀬戸・来島海峡及び関門海峡には、海上交通センターを設置して、船舶の動静を把握し、航行の安全に必要な情報の提供や、大型船舶の航路入航間隔の調整を行うとともに、巡視船艇との連携により、通航方式に従わない船舶への指導等を実施しています。 港内における安全対策
港則法に基づき、全国の87港を特定港に指定し、船舶の入出港状況の把握、危険物荷役の許可、停泊場所等の指定を行っており、また、一部の港においては船舶の出入航管制を行っています。 沿岸における安全対策
AISを活用した航行安全システムを運用し、日本沿岸において乗揚げや走錨のおそれのあるAIS搭載船に対して注意喚起や各種航行安全情報を提供しています。 2 激甚化・頻発化する異常気象等に対する事故防止対策
近年の台風等の異常気象が激甚化・頻発化する状況を踏まえ、さらなる事故防止対策の強化のため、令和3年7月1日に施行された海上交通安全法等の一部を改正する法律により、 これによって、特に勢力の強い台風などが東京湾、伊勢湾、大阪湾を含む瀬戸内海を直撃すると予想される場合、大型船等の一定の船舶に対し、湾外などの安全な海域への避難等を勧告(湾外避難等勧告)することなどができるようになり、令和4年9月には「瀬戸内海西部海域」を対象として、この勧告を初めて発出しました。 また、令和5年にあっては、8月に台風7号が近畿地方を縦断した際も、「大阪湾」を対象としてこの勧告を発出し、船舶事故の未然防止に寄与しました。 海上保安庁では、引き続き、台風等の異常気象時における船舶交通の安全確保に努めていきます。 大阪湾海上交通センターの監視及び情報提供体制の強化
昨今の自然災害の激甚化、頻発化への対応として、海上空港などの臨海部に立地する施設の周辺海域における走錨事故対策、異常気象等時における事故防止対策を適切に推進していくことが必要となっています。特に、平成30年9月の台風21号の影響により発生した関西国際空港連絡橋への船舶衝突事故では、空港アクセスが遮断され、人流・物流に甚大な影響を及ぼしました。 海上保安庁ではこれを受け、大阪湾北部海域(関西国際空港周辺海域以北の海域)における船舶の動静監視及び船舶への情報提供体制の強化を図るため、レーダー及び監視カメラを増設し、情報聴取義務海域を拡大しました。また、第五管区海上保安本部と大阪湾海上交通センターのさらなる連携強化を図る観点から、令和5年3月に同センターの管制機能を兵庫県淡路市から同県神戸市へ移転しました。さらに、平時及び異常気象等時の船舶事故の未然防止を目的として、令和5年10月に同センターに明石海峡航路の航路管制と阪神港の港内交通管制を統合しました。 海上保安庁としましては、引き続き、ふくそう海域における船舶交通の安全確保に努めます。 大阪湾海上交通センター運用管制室 海域の監視・情報提供体制の強化
船舶事故の未然防止を図るため、レーダーや監視カメラ等、海域の監視体制を強化するとともに、船舶に対して、自然災害や海域の状況に関する、より正確な情報を提供していきます。 船舶の航行安全のための技術開発
航行管制業務において、船舶の衝突、乗揚げ、走錨等の危険を回避するための新たな技術開発を推進するほか、カメラ画像から船舶の位置を把握する技術を開発し、船舶の航行安全の向上を図ります。 自動運航船に係る検討の実施
国際海事機関(IMO)において、自動運航船の安全運航のために必要な新たな国際ルールを令和10年に発効させることを目指し、具体的な検討が進められており、今後、既存の海事関係諸条約の解釈の整理や改正に関する議論が一層加速することが見込まれます。 海上保安庁においては、自動運航船の実用化に関し、船舶交通の安全確保の観点から、IMOにおける「1972年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREG)」の解釈の整理や改正に関する国際的な議論に対応し、この結果を踏まえ、COLREGに準拠している海上衝突予防法の解釈の整理等や必要に応じ他の海上交通法令の改正等に関する検討を行います。 港内における燃料供給体制の構築
近年、カーボンニュートラルの実現に向けた「脱炭素化」の取組が加速するなか、すでに運航しているLNG燃料船以外にも水素・アンモニア等を燃料とする船舶の開発が進んでいるため、これら船舶に対しての燃料供給に必要な航行安全体制の構築に努めます。 |