海上保安レポート 2024

はじめに


TOPICS 海上保安の1年


特集 海をかけるひと


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 生命を救う

2 治安の確保

3 領海・EEZを守る

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海上交通の安全を守る

8 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

2 治安の確保 > CHAPTER I. 海上犯罪の現況
2 治安の確保
CHAPTER I. 海上犯罪の現況
海上保安庁における主な海上犯罪への対応

我が国周辺海域では、違法薬物の密輸や外国人の不法上陸、密漁等、様々な犯罪行為が発生しています。

薬物密輸入事犯については、海上保安庁において過去二番目に多い押収量となる覚醒剤約700kgを関係機関と合同で押収するなど、一度に大量の薬物を密輸する事犯が相次いで発生しており、その手口は、海上貨物への隠匿を中心として、大口化・巧妙化の傾向が続いています。

密航事犯については、船員等が単独で不法上陸する等小口化の傾向が続いています。

さらに、小型航空機不時着水事件、油槽船の貨物油横領事件、「なまこ」の密漁事件、水産食料品製造業者による汚水排出事件などについて捜査しており、様々な海上犯罪取締りを実施しています。

海上保安庁における主な海上犯罪への対応

海上保安庁では、悪質・巧妙な犯罪に対し、巡視船艇・航空機等によるしょう戒、海上保安官による旅客船やターミナルの見回り等により犯罪の未然防止を行うとともに、犯罪発生時には、法と証拠に基づき、犯人の検挙に努めています。

令和5年の現況

令和5年の海上犯罪の送致件数は、7,190件であり、前年より133件(1.8%)減少しました。送致件数を法令別に見ると、漁業関係法令違反が2,694件と最も多く全体の37.5%を占め、次いで海事関係法令違反が2,557件(35.5%)、刑法犯が632件(8.8%)、海上環境関係法令違反が599件(8.3%)となっています。

海事関係法令違反では、検査を受けていない船舶を航行させる無検査航行や定員超過等の船舶安全法関係法令違反が1,010件(39.5%)と最も多く、漁業関係法令違反では、漁業権侵害や水産動植物の違法採捕所持販売、無許可操業等のいわゆる国内密漁事犯が2,673件(99.2%)、刑法犯では、衝突や乗揚げ等の船舶の往来の危険を生じさせる等の罪(業務上過失往来危険等)が472件(74.7%)、乗船者を負傷させる等の過失傷害等の罪が89件(14.1%)、海上環境関係法令違反では、船舶からの油や有害液体物質の排出等を禁止する海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律違反が308件(51.4%)とそれぞれ多く発生しています。

このほか、薬物や銃器の不法輸入(いわゆる密輸)や刃物の不法携帯等を規制する薬物・銃器関係法令違反を72件、不法出入国(いわゆる密航)や不法就労等を規制する出入国関係法令違反を33件送致しています。

有明海に小型航空機が不時着水 乗員3名が死傷

令和4年4月18日、操縦訓練飛行中の小型航空機が有明海に不時着水し、乗員3名が死傷する事故が発生しました。三池海上保安部は、慎重に捜査を行い、機長が自機の位置を喪失した結果、燃料欠乏に陥って不時着水したことなどを特定し、機長を被疑者死亡のまま「航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律」及び「業務上過失致死傷」などの疑いで送致しました。

有明海に不時着水した小型航空機の引揚げ

有明海に不時着水した小型航空機の引揚げ

事故前の小型航空機

事故前の小型航空機

燃料油を横領!油槽船乗組員等を逮捕

令和5年7月4日、大分海上保安部は、大分港を拠点として稼働する油槽船に積載していた貨物である重油を横領した同船乗組員3名、タンクローリー運転手等2名を「業務上横領」で通常逮捕しました。本件は、貨物油を転売し利益を得るため、油槽船からタンクローリーに移し替え、横領したものであり、その後の捜査の結果、同一手口による複数の余罪があり再逮捕しています。

横領事件に使用された油槽船

横領事件に使用された油槽船

油槽船に積載されていた重油の証拠採取

油槽船に積載されていた重油の証拠採取