海上保安レポート 2025

はじめに


TOPICS 海上保安の1年


特集 平和で美しく豊かな海


目指せ!海上保安官


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 生命を救う

2 治安の確保

3 領海・EEZを守る

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海の事故を防ぐ

海上保安庁の任務・体制 > Column Vol.09 道なき道を行く 〜猫ヶ岳送受信所復活への道〜
海上保安庁の任務・体制
Column Vol.09
道なき道を行く 〜猫ヶ岳送受信所復活への道〜
第九管区海上保安本部 総務部情報通信課

日本各地に、海上保安庁が航行船舶や巡視船と無線通信を行うための「送受信所」があることをご存じですか?

送受信所はその通信可能エリアが日本の沿岸海域全てを覆うように全国各地に設置されており、この送受信所のひとつが、能登半島の石川県珠洲市の「猫ヶ岳」にあります。猫ヶ岳送受信所は、主に能登半島の沖合の海域を航行する船舶と無線通信を行うための通信施設で、遭難した船舶から送信される遭難通信の受信をはじめ、船舶とのさまざまな無線通信を行うための設備が設置されています。

そんな重要な通信施設である猫ヶ岳送受信所が、令和6年には二度の災害に見舞われ、施設を管理する第九管区海上保安本部情報通信課の奮闘の日々が始まりました。

令和6年能登半島地震

令和6年1月に発生した能登半島地震では、猫ヶ岳送受信所においても停電が発生しました。

停電中であっても、非常用の発電機により運用を継続することができますが、発電機の燃料を補給し、地震による施設の被害状況を確認するために、海上保安庁職員が猫ヶ岳送受信所に向かう必要がありました。

猫ヶ岳送受信所は山奥にありますが、通常は車両でアクセスできます。しかし、地震の影響により付近の道路が多数崩壊し、徒歩でしかアクセスできない状況となりました。

第九管区海上保安本部情報通信課の職員は、厳冬期の降雪により雪が降り積もった道なき道を、重い資器材を背負って徒歩で片道2時間かけて何度も往復し、作業を実施する日々が続きました。

地震発生の約4か月後、職員による懸命な作業や停電の解消により、猫ヶ岳送受信所は通常運用が可能な状態となりました。


しかしながら、令和6年9月、豪雨が再び能登半島を襲いました……

令和6年能登半島地震後の道のり
令和6年能登半島地震後の道のり
令和6年奥能登豪雨

令和6年9月の奥能登豪雨により大規模な停電が発生し、能登半島地震後と同様の状況になりました。

しかも、豪雨の影響で発生した土砂崩れによる道路の崩壊や倒木により、猫ヶ岳送受信所までのルートは能登半島地震発生後よりもさらに悪化、寸断され、徒歩でアクセスすることすら困難な状況となっていました。


「施設の状況を確認しなければ……」

第九管区海上保安本部情報通信課職員は、地図や地形、これまでの状況を総動員で照らし合わせて、徒歩で移動が可能な猫ヶ岳送受信所までの経路の捜索・検討を行いました。

そして実際に何度もアクセスを試みては、土砂や倒木に阻まれて断念するということを繰り返したところ、全身泥だらけになりながらも、ついに猫ヶ岳送受信所にたどり着くことができました!


猫ヶ岳送受信所の復旧まではこのような厳しい状況が続きますが、能登半島沖合を航行する船舶の安全安心のため、第九管区海上保安本部情報通信課をはじめ、職員が日々全力を尽くしていきます。

令和6年奥能登豪雨後の道のり-1
令和6年奥能登豪雨後の道のり-2
令和6年奥能登豪雨後の道のり-3
令和6年奥能登豪雨後の道のり