海上保安レポート 2025

はじめに


TOPICS 海上保安の1年


特集 平和で美しく豊かな海


目指せ!海上保安官


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 生命を救う

2 治安の確保

3 領海・EEZを守る

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 海の事故を防ぐ

4 青い海を守る > CHAPTER II. 海洋環境保全対策
4 青い海を守る
CHAPTER II. 海洋環境保全対策

海上保安庁では、海上環境関係法令違反の監視・取締り、海洋環境の調査、海洋環境保全に関する指導・啓発活動等、海洋環境を保全するための総合的な取組を実施しています。

海洋環境保全対策の現況
1 海上環境関係法令違反の監視・取締り

海上保安庁では、海洋汚染につながる油の不法排出、廃棄物の不法投棄等の海上環境関係法令違反に対し、巡視船艇・航空機等による海・空からの監視・取締りに加え、沿岸部では陸上からの監視・取締りを実施しています。

令和6年に海上保安庁が送致した海上環境関係法令違反は596件であり、前年と比較して3件減少したものの、依然として違反が後を絶たない状態が続いています。違反を種類別に見ると、船舶からの油の不法排出や、廃棄物、廃船の不法投棄が多くなっています。これらの違反は、発覚を逃れるため沖合海底に廃船を不法投棄するものや、企業が設備整備への投資を惜しんで汚水を不法排出するものなどであり、その形態も、夜陰に紛れた不法排出や不法投棄、船名や船体番号を抹消した上での廃船の不法投棄等、悪質・巧妙なケースが見受けられます。

海上に広がる不法排出油の状況

海上に広がる不法排出油の状況

外国船舶による海洋汚染への対応

外国船舶による海洋汚染については、領海のみならず、排他的経済水域(EEZ)においても取締りを行っています。令和6年は5隻を検挙しました。なお、国連海洋法条約に基づき、船舶の航行の利益を考慮し、担保金制度を適用しました。

また、我が国の法令を適用できない公海等において外国船舶の油等の排出を確認した場合には、当該船舶の旗国に排出事実を通報し、適切な措置を求めています。

2 海洋環境調査
海洋汚染の調査

海上保安庁では、海洋汚染の防止及び海洋環境の保全のため、閉鎖性の高い内湾域から外洋域にかけて、海水や海底堆積物を採取し、油分、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、重金属等の調査を行っています。

放射能調査

海洋環境モニタリングの一環として、核実験等による海洋環境への影響を把握するため、日本周辺海域において海水や海底堆積物を採取し、放射能調査を行っています。

また、原子力規制庁が定める実施要領に基づき、原子力艦が寄港する横須賀港(神奈川県)、佐世保港(長崎県)、金武中城港(沖縄県)において、周辺住民の安全・安心を確保するため、定期的に海水や海底堆積物を採取・分析するとともに、原子力艦の入港前、寄港時、出港後の放射能調査を行っています。

海底堆積物の採取作業

海底堆積物の採取作業

海水の分析作業

海水の分析作業

3 海洋環境保全に関する指導・啓発

海洋汚染を防止し、海洋環境を保全するためには、海事・漁業関係者、マリンレジャー等を行う方々のみならず、広く国民の皆様と一緒に海洋環境保全活動に取り組んでいくことが重要です。

海上保安庁では、多くの方々に対して、海洋環境保全に関する指導・啓発活動を重点的に実施するため、毎年5月30日から6月30日までの期間を「海洋環境保全推進月間」と定め、「未来に残そう青い海」をスローガンとして、様々な取組を行っています。若年層を含む一般市民向けのイベントとして、海洋環境保全教室や海浜清掃を開催したほか、海事・漁業関係者などを対象とした海洋環境保全講習会を実施しました。その他、同期間中には、環境省と日本財団の共同事業である「海ごみゼロウィーク」一斉清掃も開催されており、海上保安庁は同事業にも積極的に協力しています。

また、平成12年から毎年、全国の小中学生を対象に、公益財団法人海上保安協会との共催で「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」を開催してきましたが、今回で第25回目の節目を迎えたことから、本開催をもちまして終了となりました。

4 海の再生プロジェクト

海洋環境の保全・再生のために東京湾、伊勢湾、大阪湾及び広島湾では「海の再生プロジェクト」が進められています。これらのプロジェクトでは、海上保安庁を含む国や地方公共団体、教育・研究機関、民間企業、市民団体等の関係機関が連携し、陸域からの汚濁負荷削減対策、海域の環境改善対策及び環境モニタリングを推進しています。

訪船指導

訪船指導

漂着ごみ分類調査

漂着ごみ分類調査

地域における海浜清掃活動

地域における海浜清掃活動

若年層に対する海洋環境保全教室

若年層に対する海洋環境保全教室

「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」について

海上保安庁では、将来を担う小中学生の子どもたちに海洋環境について考える機会としてもらうことで海への関心を高め、海洋環境保全思想の普及を図るとともに、海上保安業務への理解の促進を図ることを目的として、公益財団法人海上保安協会と共催で平成12年から、「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」を毎年開催してきましたが、第25回の節目となる令和6年をもちまして終了しました。

全国各地から応募された素晴らしい作品の数々は、25年間で総応募数「637,411点」であり、海上保安庁の啓発ポスターや地域の展示会などを通じて、多くの方々にご覧いただく中で、海洋環境保全思想の普及や海上保安業務への理解の促進に大きく貢献してきました。

最後の開催となった第25回では、全国から計5,755点の応募があり、海水浴や魚釣りをして海を楽しむ様子や海浜清掃を行っている様子など、実際に海で体験した思い出などをもとに、それぞれの子どもたちが思う「青い海」が葉書の隅々まで色鮮やかに描かれていました。

第25回についても、厳正なる審査及び選考を経て、特別賞(国土交通大臣賞)が決定し、令和6年12月末には海上保安庁長官による伝達式を実施しました。

第25回をもって「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」は終了となりましたが、海上保安庁は今後とも「未来に残そう青い海」をスローガンに海洋環境保全教室等を通じて、将来を担う子どもたちを対象に海洋環境保全思想の普及のための啓発活動に尽力していきます。

これまでご応募いただいた子どもたちやご家族、関係者の皆様に感謝を申し上げます。

第25回 特別賞(国土交通大臣賞)伝達式

第25回 特別賞(国土交通大臣賞)伝達式

特別賞(国土交通大臣賞)

(小学生低学年の部)

辻口 桂衣さん
辻口 桂衣さん
海上保安庁長官賞

(小学生低学年の部)

泊 明輝さん
泊 明輝さん

(小学生高学年の部)

新田 芽以さん
新田 芽以さん

(中学生の部)

鈴木 咲紅さん
鈴木 咲紅さん
QRコード

※過去25年間の受賞作品は海上保安庁HPに公開しています。

今後の取組

海上保安庁では、引き続き、海洋環境調査により海洋汚染の現況を的確に把握するとともに、海上環境関係法令違反の厳正な監視・取締りを実施します。また、広く指導・啓発活動を推進するとともに、関係機関と情報共有体制を構築し、各機関と連携・協力して海洋環境保全につながる取組を推進していきます。