海上保安庁では、海上環境関係法令違反の監視・取締り、海洋環境の調査、海洋環境保全に関する指導・啓発活動等、海洋環境を保全するための総合的な取組を実施しています。
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4 青い海を守る
CHAPTER II. 海洋環境保全対策
海上保安庁では、海上環境関係法令違反の監視・取締り、海洋環境の調査、海洋環境保全に関する指導・啓発活動等、海洋環境を保全するための総合的な取組を実施しています。 1 海上環境関係法令違反の監視・取締り
海上保安庁では、海洋汚染につながる油の不法排出、廃棄物の不法投棄等の海上環境関係法令違反に対し、巡視船艇・航空機等による海・空からの監視・取締りに加え、沿岸部では陸上からの監視・取締りを実施しています。 令和5年に海上保安庁が送致した海上環境関係法令違反は599件であり、前年と比較して19件減少しました。違反を種類別に見ると、船舶からの油の不法排出や、廃棄物、廃船の不法投棄が多くなっています。これらの違反は、発覚を逃れるため沖合海底に廃船を不法投棄するものや、企業が設備整備への投資を惜しんで汚水を不法排出するものなどであり、その形態も、夜陰に紛れた不法排出や不法投棄、船名や船体番号を抹消した上での廃船の不法投棄等、悪質・巧妙なケースが見受けられます。 海上に広がる不法排出油の状況 外国船舶による海洋汚染への対応
外国船舶による海洋汚染については、領海のみならず、排他的経済水域(EEZ)においても取締りを行っています。令和5年は3隻を検挙しました。なお、国連海洋法条約に基づき、船舶の航行の利益を考慮し、担保金制度を適用しました。 また、我が国の法令を適用できない公海等において外国船舶の油等の排出を確認した場合には、当該船舶の旗国に排出事実を通報し、適切な措置を求めています。 会社ぐるみで事業所から汚水を排出
令和4年10月、茨城海上保安部は、茨城県那珂湊港内に「水質汚濁防止法」で定められた基準値を超える汚水を排出したとして、水産食料品製造業者に対して捜索差押えなどの強制捜査を行いました。 その後の捜査によって、同社の代表取締役を含む2名が共謀の上、汚水を過去5回にわたり不法に排出していたことを明らかにしました。 排水口から排出される汚水 2 海洋環境調査
海洋汚染の調査
海上保安庁では、海洋汚染の防止及び海洋環境の保全並びに閉鎖性の高い港湾等において、海水や海底堆積物を採取し、油分、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、重金属等の調査を継続的に行っています。 放射能調査
海洋環境モニタリングの一環として、核実験等による海洋環境への影響を把握するため、日本周辺海域において海水や海底堆積物を採取し、放射性核種の調査を継続的に行っています。 また、原子力規制庁が定める実施要領に基づき、原子力艦が寄港する横須賀港(神奈川県)、佐世保港(長崎県)、金武中城港(沖縄県)において、周辺住民の安全・安心を確保するため、定期的に海水や海底堆積物を採取・分析するとともに、原子力艦の入港前、寄港時、出港後の放射能調査を行っています。 海底堆積物の採取作業 海水の分析作業 3 海洋環境保全に関する指導・啓発
海洋汚染を防止し、海洋環境を保全するためには、海事・漁業関係者、マリンレジャー等を行う方々のみならず、広く国民の皆様と一緒に海洋環境保全活動に取り組んでいくことが重要です。 海上保安庁では、多くの方々に対して、海洋環境保全に関する指導・啓発活動を重点的に実施するため、毎年5月30日から6月30日までの期間を「海洋環境保全推進月間」と定め、「未来に残そう青い海」をスローガンとして、様々な取組を行っています。海事・漁業関係者やマリンレジャー等を行う方々を対象とした海洋環境保全講習会をはじめ、若年層を含む一般市民の方々を対象とした海洋環境保全教室や海浜清掃などのイベントを開催しています。また、同期間中には、環境省と日本財団の共同事業である「海ごみゼロウィーク」一斉清掃も開催されますが、同事業にも海上保安庁は積極的に協力しています。 特に海浜清掃については、地方公共団体、教育機関及び公益財団法人海上保安協会等と連携しつつ、地域の方々のご理解とご協力を得た上で、全国の海岸等で実施しており、多くの方々に身近なごみが海洋汚染の現状に結びついていることを体感してもらうなど、海洋環境保全の意識高揚へとつなげるための啓発活動として重点的に行っています。 また、全国の小中学生を対象に、海への関心を寄せてもらい、海洋環境保全思想の普及を図ることを目的として、海上保安協会との共催で「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」を開催しています。 4 海の再生プロジェクト
海洋環境の保全・再生のために東京湾、伊勢湾、大阪湾及び広島湾では「海の再生プロジェクト」が進められています。これらのプロジェクトでは、海上保安庁を含む国や地方公共団体、教育・研究機関、民間企業、市民団体等の関係機関が連携し、陸域からの汚濁負荷削減対策、海域の環境改善対策及び環境モニタリングを推進しています。 訪船指導 漂着ごみ分類調査 地域における海浜清掃活動 若年層に対する海洋環境保全教室 未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクールの開催
海上保安庁では、将来を担う小中学生の子どもたちに海洋環境について考える機会としてもらうことで海への関心を高め、海洋環境保全思想の普及とともに、海上保安業務への理解の促進を図ることを目的として、公益財団法人海上保安協会との共催で「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」を開催しています。 今年は、全国の小中学生から16,700点の応募がありました。作品の傾向としては、海水浴や魚釣りなどをして海を楽しむ様子や海浜清掃を行っている様子など、海での体験を色鮮やかに描いているものが多数見受けられました。今回の応募作品も力作ばかりで、選考に大変苦慮しましたが、厳正なる審査及び選考の結果、特別賞(国土交通大臣賞)、海上保安庁長官賞等の受賞作品が決定しました。 この図画コンクールを通じて、我々の尊い財産であるこの豊かな海を後世に残せるよう、皆様と一緒に海洋環境の保全活動に取り組んでいきます。 特別賞(国土交通大臣賞)
(小学生低学年の部) 堀池 勇輝(ほりいけゆうき)さん
海上保安庁長官賞
(小学生低学年の部) 比嘉 璃海(ひがりみ)さん
(小学生高学年の部) 北角 一華さん(きたかどかずは)さん
(中学生の部) 大串 雪花(おおくしゆか)さん
海上保安庁では、引き続き、海洋環境調査により海洋汚染の現況を的確に把握するとともに、海上環境関係法令違反の厳正な監視・取締りを実施します。また、広く指導・啓発活動を推進するとともに、関係機関と情報共有体制を構築し、各機関と連携・協力して海洋環境保全につながる取組を推進していきます。 |