ひとたび船舶の火災、衝突や沈没等の事故が発生すると、人命・財産が脅かされるだけでなく、事故に伴って油や有害液体物質が海に排出されることにより、自然環境や付近住民の生活にも甚大な悪影響を及ぼします。海上保安庁では、事故災害の予防に取り組むとともに、災害が発生した場合には関係機関とも連携して、被害を最小限にするよう取り組んでいます。
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4 災害に備える
CHAPTER I 事故災害対策
ひとたび船舶の火災、衝突や沈没等の事故が発生すると、人命・財産が脅かされるだけでなく、事故に伴って油や有害液体物質が海に排出されることにより、自然環境や付近住民の生活にも甚大な悪影響を及ぼします。海上保安庁では、事故災害の予防に取り組むとともに、災害が発生した場合には関係機関とも連携して、被害を最小限にするよう取り組んでいます。 1 事故災害への対応
船舶火災
平成27年に発生した船舶火災隻数は73隻で、前年と比べ10隻減少しました。船舶火災隻数を船種別で見ると、漁船の火災隻数が最も多い傾向が続いており、平成27年においても、漁船の火災隻数は29隻と、全体の約40%を占めています。 このような船舶火災に対して海上保安庁は、消防機能を有する巡視船艇による放水等の消火活動を実施しています。平成27年7月に北海道苫小牧沖で発生したフェリーの火災事故においては、巡視船艇等による人命救助及び行方不明者の捜索を行うとともに、消火活動を行いました。 油排出事故
平成27年に海上保安庁が確認した油による海洋汚染発生件数は247件で、前年と比べ12件増加しました。海上における油等の排出事故では原因者による防除が原則となっているため、海上保安庁では、原因者が適切な防除を行うための指導・助言を行っています。一方、油等の排出が大規模である場合や、原因者の対応が不十分な場合には、関係機関と協力の上、海上防災の専門集団である機動防除隊等により海上保安庁自らが防除を行っています。平成27年においては、10月に山口県六連島東方沖で発生したタンカー同士の衝突による油排出事故を始め、138件の油排出事故に対応しました。
2 事故災害対処のための体制強化
海上保安庁では、事故災害に対して、迅速かつ的確な対応を行うための体制の整備を進めています。現場で対応にあたる海上保安官に対して、海上火災や油排出事故等への対応等に関する研修・訓練を実施しました。 また、海上に排出された油等の防除を的確に行うためには、排出された油等がどのように流れるかを予測することが重要です。海上保安庁では、油排出事故等に備えるため測量船等で観測した海象(海流、水温等)の情報を基に油等が漂流する方向、速度等を予測する漂流予測に取り組んでいます。特に、相模湾や伊豆諸島周辺の海域においては、海洋短波レーダーにより海流の情報等をリアルタイムに収集することで、漂流予測の精度向上に努めています。 このほか、全国の沿岸域の地理・社会・自然・防災情報等を沿岸海域環境保全情報としてとりまとめ、インターネット上で公開しています。これらの情報は、CeisNet(http://www4.kaiho.mlit.go.jp/CeisNetWebGIS/)として、パソコンやスマートフォンから閲覧できます。 3 国内連携
事故災害による被害を防止するためには、事業者をはじめとする関係者の皆様に事故災害に対する意識を高めていただくことや地方公共団体等の関係機関との連携が重要です。海上保安庁では、タンカー等の危険物積載船舶の乗組員や危険物荷役事業者等を対象とした訪船指導、運航管理者等に対する事故対応訓練、タンカーバースの点検等を実施しています。また、地方公共団体、漁業協同組合、港湾関係者等で構成する協議会等を全国各地に設置し、災害発生時に迅速かつ的確な対応ができるよう油防除訓練や講習等を実施しています。 4 国際連携
油や有害液体物質等による海洋環境汚染は、我が国だけでなく周辺の沿岸国にも影響を及ぼすことから、各国と連携した対応が重要です。海上保安庁では、各国関係機関との合同訓練や国際海事機関(IMO)の関係委員会への参加等、国際的な取組みに貢献しています。 また、海上保安庁では、研修等を通じてこれまで培ってきた海上災害への対応に関するノウハウを各国関係機関に伝えることで、海上防災体制の構築を支援しています。平成27年においても、独立行政法人国際協力機構(JICA)の協力の下、アジア諸国等の7か国から関係機関の現場指揮官クラスの職員を我が国に招へいし、油流出事故に起因する海洋環境汚染対策等の集団研修を実施したほか、スリランカ沿岸警備庁の油防除能力を強化することを目的とする技術支援を実施しました。
海上保安庁では、今後とも、巡視船艇・航空機や防災資機材の整備、現場職員の訓練・研修等を通じ、事故災害への対処能力強化を推進するとともに、関係者への適切な指導・助言、国内外の関係機関との連携強化を通じて、事故災害の予防や事故災害発生時の迅速かつ的確な対応に努めます。 |