発表日
令和8年1月29日
概要
小笠原諸島周辺において、大規模な沈水カルストの詳細な海底地形が解明されるとともに、国内で3例目となる新たな沈水カルスト地形の存在が明らかになりました。
本文
海上保安庁海洋情報部は東京都小笠原諸島の南島*1及び母島*2において(図1)、浅海域の水深データの整備のため、航空レーザー測量*3を実施しました。データを解析した結果、以下のことが明らかになりました。
- 南島周辺(図2)では、国内では珍しい「沈水ドリーネ」と呼ばれる凹地状の沈水カルスト地形*4が南島北西沖に連続して存在することが明らかになりました(図3及び図4)。
- 母島周辺では沈水カルスト地形が存在することが初めて明らかになりました(図5)。このような海の中に広がる沈水カルスト地形が発見されたのは国内で3例目となります。
これらの海域には、沈水ドリーネの外縁が繋がって形成された細長い稜線状の地形が広がっています。このような地形は周囲の海底よりも浅く、暗礁となるため、その分布や水深等を把握することは船舶の航行安全にとって重要です。今後、結果を海図等へ反映するなどし、船舶航行の安全に繋げてまいります
[環境省小笠原自然保護官事務所 藤田道男・国立公園保護管理企画官からの 本調査成果に対するコメント]
「海面が現在より低い時代に形成されたカルスト地形が、海面下に広く分布している様子が科学的に明らかとなった。この成果は、世界自然遺産の小笠原諸島にとって、また一つ大きな魅力を加えたことになる。」
海洋情報部では引き続き航空レーザー測量を実施し、沿岸域における船舶の航行安全及び海洋環境の保全ならびに海洋権益の確保などに資する海洋の基盤情報の整備に努めてまいります。
解説文で詳しく解説しています。
*1 南島
小笠原諸島父島の南西に位置する南北約1.5km東西約400mの無人島。島の中央に位置する扇池は外海とトンネル状につながっており、人気の観光地となっています。国の天然記念物にも指定されています。南島の沈水カルストは大部分が海の中にあるため、その詳細は不明でした。
*2 母島
小笠原諸島父島の南約50kmに位置する島。13km×4kmの大きさを持ちます。島北東部の石門地区にはカルスト地形や鍾乳洞が発達しています。これまで母島周辺で沈水カルスト地形の存在は報告されていません。
*3 航空レーザー測量
航空機からレーザー光を発射し、海底からの反射光の往復時間により水深等を測ります。測量船が近づくことが難しい浅海域でも安全かつ効率的に測量できます。透明度の高い海域では水深およそ50mまで測深することができます。
*4 沈水カルスト地形
陸上で石灰岩が雨水や地下水などによって溶食(化学的溶解)を受けてできた地形の総称をカルスト地形といい、鍾乳洞やドリーネ(地表のすり鉢状の穴)などが含まれます。沈水カルスト地形は、陸上で形成されたカルスト地形が海水準上昇や地盤沈下によって海中に沈んだもので、大規模な沈水カルスト地形が報告されているのは国内でも2例のみです(石垣島名蔵湾と父島の南島周辺)。

図1 南島及び母島の位置図

図2 南島周辺の航空写真(国土地理院提供)

図3 南島周辺の海底地形図(図2と同じ範囲)
南島周辺の水深0~15mでは航空写真の判別から沈水カルスト地形が存在することが知られていました(白色実線)。南島北西沖の水深が深くなる場所では、航空写真から沈水カルスト地形は見えません(図2参照)。今回の調査により、南島北西沖の水深約50mの深い海まで沈水カルスト地形が連続していることが分かりました(白色点線)。全体を併せると、沈水カルスト地形は少なくとも4km×2km(面積約9.5km2、東京ドーム約200個分)の範囲に広がっています。

図4 南島北西沖の沈水ドリーネの鳥瞰図
北西方向から俯瞰。鉛直方向は3倍に誇張。本海域の沈水ドリーネは、直径150~200m、深さ10~20mであることがわかりました。

図5 母島周辺の海底地形図
白色の実線は航空レーザー測量から判別できた沈水カルスト地形の範囲