海上標識の使用方法
 海上において工事・作業を実施したり、漁業施設その他の構造物を設けるときは、その保全を図り、かつ、付近を通航する船舶の安全を確保するため、当該区域や構造物を明示する標識が必要です。
 このように海上交通の安全を図るために設置する「航路標識」には、例えば、工事区域を明示するときには黄色の単閃光、可航水域の右げん側限界付近の構造物を明示するときは赤色の単閃光や群閃光を用いなければならないといったように、それぞれの設置場所や標示目的によって、「標識の塗色」や「標識灯火の光色」、「光り方(灯質)」が国際ルール等で定められています。
 航路標識が、定められたルールによって設置されていないと、航海者の誤認を招き、海難事故を誘発するおそれがあります。
 航路標識」は、海上保安庁が設置するもの及び海上保安庁以外の者が自分の行う事業のために海上保安庁長官の許可を受けて設置するもの(許可標識)に大別されますが、この他に許可標識の許可基準である施設・性能基準に満たない小規模な航路標識(簡易標識)があります。
 海上の工事・作業区域、漁業施設、海上構造物などを標示するために航路標識を設置しようとするときは下の手続きを行ってください。
(設置事例
主として小規模な航路標識を設置しようとする事業者その他の方々に、標識の塗色や灯火の色、光り方などそれぞれの設置目的に応じた正しい標示を行っていただくようその基本ルールを図示したものです。
すでに完成した防波堤先端等を標示するとき
港の航路をブイで標示するとき
可航水域内の暗礁など危険な障害物を標示するとき
防波堤延長工事の区域を標示するとき
公有水面埋立や海上構造物などの工事・作業区域を標示するとき
区画漁業などの区域を標示するとき
工事区域や漁業区画などの一部が航路に接するとき
漁業施設(海洋牧場施設灯など)を標示するとき
  波浪観測塔・海洋情報収集施設を標示するとき
  シーバース灯・石油堀削施設灯などを表示するとき
沈船など新たな障害物を標示するとき
海上架橋の存在と橋梁下の可航水路を標示するとき

標識灯火の灯質(光り方)と光度
◎灯質(光り方)の選び方
1 近傍に設置された海上標識の灯質(灯色と光り方)と紛らわしくないものを選びます。
2 「単閃光」で最も視認しやすいのは「毎3秒に1閃光」です。
3 一つの区域を複数の標識で標示するときは、それらの標識を「同期点滅」させると視認効果が倍増します。
◎光度の選び方
 海上標識は、一般的に小規模で、かつ設置環境が悪いため、潮風や干潮によって標識の風防ガラスやレンズが汚損され、公表されている光度[カンデラ(cd)を単位としている。1cd≒1燭光]が相当減光します。
 標識の設置にあたっては、このような状況を踏まえ、その設置海域付近を航行する船舶の動向を十分把握して、必要な光達距離(標識灯火の視認距離)を有する光度を選定しなければなりません。
 下の表は、標識灯火の光度に対応する光達距離を表わしたものです。
 中欄の光達距離(公称値)は、標識カタログなどで記載される大気の透過率の最も良い状態における値(透過率85%:視程約34Km)を示しています。
 航路標識の設置場所、付近海上交通の安全を考慮し、必要な光度を有するものを選ぶことが大切です。
光  度 5cd 10cd 15cd 20cd 25cd 30cd 50cd
光達距離
(公称値)
4.1Km 5.5Km 6.5Km 7.3Km 7.9Km 8.4Km 10.1Km

航路標識の申請手続き等
 許可標識(一定基準以上の航路標識を設置するときは「許可」が必要です。)
 海上の工事・作業区域、漁業施設、海上構造物などを標示するために設置しようとする航路標識の規模や性能が、航路標識法(昭和24年法律第99条)に基づく運用基準に該当するときは、海上保安庁の許可を受けてください。
 「許可」を要する航路標識施設の基準は概ね次のとおりです。
種  別 意  味 光  度 構 造 等
灯  台 陸岸や防波堤等に設置し、岬角や港口等を示す光を発する構造物
15カンデラ以上 堅牢で十分な昼標効果を有するもの
灯  標 岩礁や浅瀬等に設置し、危険な障害物を示す光を発する構造物 15カンデラ以上 堅牢で十分な昼標効果を有するもの
灯浮標 危険な障害物や航路を示す光を発する浮体構造物 15カンデラ以上 十分な耐浪性と昼標効果を有するもの
橋梁灯 橋梁に設置し、その橋梁下の航路や可航巾を示す標識灯火 15カンデラ以上 十分な設置強度を有するもの
 ※1 灯標の灯火のないものを「立標」といいます。
 ※2 灯浮標の灯火のないものを「浮標」といいます。
 ※3 「昼標効果」とは、昼間において、その標識の形や色を識別できる機能をいい、「昼標効果を有する」とは、付近通航船舶が十分な安全距離から目標とする標識の形や色、即ち、その標識の表わす意味が判別できる機能を有するものをいいます。
 航路標識法による「許可」を受けるときは、国土交通省令で定められている申請書類を最寄りの海上保安部へ提出して下さい。
 ※航路標識を設置するときの許可申請に必要な書類(航路標識法施行規則第1条)
   ①申請書  ②理由書  ③航路標識の設置位置及びその付近の状況を示した図面
   ④航路標識の全体を示した側面図  ⑤航路標識の機器の構成を示した図面 
   ⑥告示要項書  ⑦用品の調書
 ※許可申請ご相談は、航路標識を設置しようとする期日の3ヶ月前を目途に行って下さい。

簡易標識(一定基準に満たない航路標識を設置したときは「届出」が必要です。)
 ●海上の工事・作業区域、漁業施設、海上構造物などに簡易標識(航路標識の規模や性能が、航路標識法(昭和24年法律第99条)に基づく運用基準に該当しない)を設置したときは、調査票等を最寄りの海上保安部に届け出て下さい。
 ※簡易標識を設置したときの届出書類
   ①簡易標識調査票   簡易標識調査票(記入例)
   ②航路標識の設置位置及びその付近の状況を示した図面  ③航路標識の機器の仕様書    
   ④航路標識の機器の構成を示した図面  ⑤標識写真(デジタルカメラ可)
 ※航路標識の設置に当たっては、次の点に留意して下さい。
 1簡易標識を設置しようとする際は、設置場所の立地条件、標識の規格の選定等について、期間に余裕をもって(概ね3ヶ月前)、最寄りの海上保安部に相談しましょう。
 2簡易標識を設置する際には、設置海域を管轄する海上保安部交通課に連絡しましょう。
 3簡易標識は、小規模であるため、許可の対象外となっておりますが、設置海域の状況変化等により標識規模を許可標識とする必要がある場合には、許可標識への移行を図りましょう。
 4設置後、簡易標識を正常に維持するため、障害時に対応できる十分な予備品を備えるとともに、標識監視体制の確保に努めましょう。
 5簡易標識に使用する灯器は、(財)日本航路標識協会の型式認定を受けたものを使用しましょう。