−国土交通 景観形成ガイドラインシリーズ−
航路標識整備事業
景観形成ガイドライン
海上保安庁
交通部
はじめに
平成15年7月10日、国土交通省において、「美しい国づくり政策大綱」が決定され、本大綱の取り組みの基本的考え方として、「@取り組みの基本姿勢、A地域ごとの状況に応じた取り組みの考え方、B各主体の役割と連携、C各主体の取り組みの前提となる条件整備」が示された。
また、この実現を確かなものとするため、「事業における景観形成の原則化」等15の具体的施策を展開していくこととされた。
本ガイドラインは、この政策大綱の具体的施策の中で、「分野ごとの景観形成ガイドラインの策定等」として、「事業担当各職員が事業執行の各段階で活用するものとして、基本的視点や検討方法、手続きの考え方など地域を問わず全国的に適用すべき基本的事項、意匠・色彩の計画や施工方法など地域特性に応じて適用する参考的事項を明確にかつ可能な限り網羅的に整理したガイドラインを分野ごとに策定する。」と定められていることを受け、官庁営繕事業、港湾事業等とともに、「国土交通 景観形成ガイドラインシリーズ」の一施策として、「航路標識整備事業景観形成ガイドライン」を定めるものである。
平成16年3月30日
海上保安庁交通部
航路標識整備事業景観形成ガイドライン
T 目的
航路標識等は、その機能を有効に発揮するよう、多くが岬の先端、島嶼、防波堤等に設置され、結果として、周辺の緑地、海岸線等とともに良好な景観を形成し、また、港湾・漁港施設及び港湾・漁港周辺の市街地との調和が図られているところである。 このガイドラインは、「美しい国づくり政策大綱(平成15年7月10日)」(以下「大綱」という。)の国土交通省決定を踏まえ、「事業担当各職員が事業執行の各段階で活用するものとして、基本的視点や検討方法、手続きの考え方など地域を問わず全国的に適用すべき基本的事項、意匠・色彩の計画や施工方法など地域特性に応じて適用する参考的事項を明確にかつ可能な限り網羅的に整理(大綱抜粋)」並びに航路標識整備事業において、従来から取り組んできた、航路標識等の設置環境に配慮した景観形成の一層の充実を図ることを目的とする。 |
U 定義
このガイドラインにおいて、「航路標識等」とは、航路標識法第1条第2項で定義する灯台、無線方位信号所等、並びにその付属施設をいう。 |
V 基本的事項
基本的視点や検討方法、手続きの考え方など地域を問わず全国的に適用すべき基本的事項について、次のとおり示す。
1 取り組みの基本的考え方
航路標識整備事業における景観形成の取り組みに際し、大綱「U 美しい国づくりのための取り組みの基本的考え方」に留意する。 |
2 航路標識の機能の確保
航路標識法に基づく航路標識は、灯光、形象、彩色等の手段により、航行する船舶の指標とする施設であり、この国際的な画一性を図るため、「1974年の海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」において、締約国が航路標識を設置する場合は、「国際的な勧告及び指針(国際航路標識協会(IALA)に考慮を払う」こととされている。 このため我が国においては、国際的な勧告等に従い、灯光、形象、彩色等の基準を定め航路標識を設置しているところである。 以上のことを踏まえ、景観形成への配慮に当たり、航路標識等の設置・運用に係る形態・色彩・高さ等についての基準及び慣行を遵守し、航路標識等の機能を確保する。 |
3 関係基準等の遵守等
航路標識等の設計においては、「光波標識設備基準」、「航路標識施設基準」、「航路標識構造物設計基準」、「FRP(強化プラスチック)製灯塔設計基準」、「航路標識業務用鉄塔設計指針・同解説」、「三角形鋼管式鉄塔設計要領」等の基準等を遵守する。 また、「明治期に建設された灯台施設の保全」、「灯台施設調査委員会(昭和60〜62年度)」及び「灯台施設保全委員会(平成3年〜12年度)」における景観的評価、観光資源的評価、歴史的経緯等の調査事項及び保全に際しての答申事項について留意する。 おって、「防波堤灯台標準図」に定める機能的かつ経済的な「機能美」を備えた設計についても留意する。 |
W 地域特性等に応じて適用する参考的事項
前項「基本的事項」を踏まえ、地域特性等に応じて適用する参考的事項について、次のとおり示す。
岬の先端、島嶼、防波堤等における航路標識等の建設、改修又は廃止に際しての景観形成への配慮に当たっては、大綱における「美しい国づくりのための取り組みの基本的考え方」並びに航路標識整備事業において、従来から地方自治体等と連携して取り組んできた「岬のオアシス構想」及び「航路標識のデザイン化」の概念を踏まえ、別添資料に示す事例を参考としつつ、地方自治体等と連携し、航路標識等周辺を公園化整備、航路標識等へ展望台・灯台資料展示館などを併設、航路標識等をライトアップ、地域の観光資源・特産品などをモチーフに、あるいは港周辺の歴史的な街並みとの協調を図る等による航路標識のデザイン化の計画、設計などを行う。 |
≪「岬のオアシス構想」概念≫
海上保安業務を遂行するに当たり、広く国民の理解を得ることが必要であり、従来にも増して地域社会との連携を深め、海上保安業務をアピールするとともに相互協力が重要となっている。
そこで、地域との連携方策の一つとして、地域のシンボル的存在であり、観光資源等としても価値の高い灯台の活用を地域に働きかけ、地方公共団体等が整備する公共の施設(灯台資料館、レストハウス、公園施設、遊歩道等)との一体化を図ることによって、人々の交流、レジャー等の場であるアミューズメント広場として機能させる。
また、航路標識等が海上との接点に位置するという地理的優位性を有することから、航路標識等を海上における情報収集・提供等の基地(携帯電話中継施設等)としても活用することにより、結果として新たな鉄塔建設を不要とし、良好な景観形成の一助とする。
以上のように「岬のオアシス構想」は、航路標識等の有効活用(国有財産の使用を含む。)を地方公共団体等とともに実現し、海上保安業務の地域社会との調和・協調並びに良好な景観形成をも図るものである。
≪「航路標識のデザイン化」概念≫
近年、海上保安庁が航路標識を整備するに当たって、地方公共団体等から「地域の特色を捉えたシンボルの付与又はモニュメント化を」との要望が増えつつあること及び港湾・漁港整備事業者による緑地・親水空間・にぎわい空間の整備等の取り組みに鑑み、地元計画及び港湾・漁港計画との調和・協調を図ることにより、良好な景観形成の一助とする。
調和・協調の例としては、海上保安庁が整備した航路標識等に地方公共団体等が地域の特色を捉えたシンボルの付与又はモニュメント化(以下「デザイン化」という。)を付与する、あるいは、地方公共団体等が整備した展望塔、デザイン化施設等に海上保安庁が航路標識機能を付加する等である。
以上のように「航路標識のデザイン化」は、航路標識等の有効活用(国有財産の使用を含む。)を地方公共団体等とともに実現し、海上保安業務の地域社会との調和・協調並びに良好な景観形成をも図るものである。
(沿革)
保交計第382号(平成16年3月30日) 制定
航路標識整備事業景観形成ガイドライン(PDF形式)