沖縄から!美安全Tips

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  Vol.04 令和6年6月7日

春の行事ハマオリ・潮の満ち引きと海の安全との関係

ハマウリの日、泡瀬干潟で潮干狩りを楽しむ人たち
(令和6年4月4日撮影)

 沖縄では3月から4月にかけて、海水浴場が相次いで海開きを迎え、マリンレジャーシーズンが本格化します。

 そんな中、旧暦3月3日(新暦3月~4月)には県内の伝統行事「ハマオリ」が行われます。

 ハマオリはハマウリ、浜下り、浜降りとも呼ばれています。

 もともとは女性が浜辺に下りて、海水で手足を清めて健康を祈るという風習でしたが、やがて女性たちが浜辺で魚介類を拾い、あるいは弁当や三月菓子(サングヮチガーシー)という菓子で食事やゆんたく(おしゃべり)を楽しむ、「沖縄のひな祭り」とも言われる行事になりました。

 ちなみに「ヮ」は、キーボードで「lwa(エル・ダブリュー・エー)」と打ち込むと出てきます。「シークヮーサー」「ニングヮチカジマーイ」など沖縄で目にする機会の多い文字ですね。

 また、ハマオリが行われる旧暦3月3日は、潮の干満差が一年を通じて最も大きい「大潮」にあたります。

 中城保安部管内の中城湾には、県内でも最大級の広さの干潟「泡瀬干潟」があり、大潮の時期には、男女問わず多くの人でにぎわいます。

 ところが、潮干狩りをはじめマリンレジャーでは、潮の満ち引きが原因となって、さまざまな海難事故が起こることがあります。

 今回は、潮の満ち引きと海の安全との関係について説明します。 

 そもそも潮の満ち引きは、月の引力と地球の自転等によって、おおむね1日に2回の周期で、海水面上昇のピーク「満潮」と下降のピーク「干潮」とを繰り返す現象です。

 これらピークの時刻と海水面の高さは地域によって異なりますが、その予測値は計算によって求めることができるので、カレンダーやインターネットサイト等に記されて広く公開されています。

 この潮の満ち引きが影響してマリンレジャーにどのような事故を起こすのでしょうか。
 干潮時から満潮時までを、4つのサイクルに分けて以下説明します。


ハマオリの日(令和6年4月11日・旧暦3月3日)の潮汐と海の事故リスクの例
【画像クリックで拡大表示】
【干潮時】
 下げ潮による海水面低下のピークです。
 水深が最も浅くなるため、カヤックやミニボート等が乗り揚げる事故や、船底を傷つけて浸水する事故が発生しやすくなります。

 また、大潮の頃の沖縄では、満潮時と干潮時との潮位差は約2mとなります。
 ボートやカヤック等の船舶を岸壁に係留する際にこの潮位差を考慮した余裕をもたせたないと、船体が宙づり状態になって傾いて、転覆・浸水に至るおそれがあります。


【上げ潮】
 満ち潮とも言います。干潮時から満潮時にかけて徐々に海水面が上がり、これまで陸地だった浅瀬が徐々に消え、
 潮干狩りや遊泳等では、陸岸まで戻れなくなる帰還不能事故が発生します。

 遠浅の地形の多い沖縄の海岸では、広い範囲で急激に潮が満ちることがあるので、特に注意が必要です。

 たとえ足首くらいの深さの浅瀬でも、深みや海藻に足をとられて転倒し、怪我や溺水のおそれがあります。
 「潮が満ち始めたら陸岸へ戻る」のでなく、「潮が満ち始める頃には陸岸に戻っている」ことが大切です。

 このほか、波打ち際も陸側へ広がっていくため、砂浜に置いた荷物やカヤック・ミニボート等が流されることがあります。


【満潮時】
 上げ潮による海水面上昇のピークです。
 海水面が上がることによって、リーフ(サンゴ礁)で囲まれた内海の多い沖縄の海では、
 リーフを越えて波の打ち込みが増えるなど、風浪の影響が大きくなります。

 特に、台風や地震・津波の自然災害が起こった時、
 台風等による高潮の発生や津波の到達が満潮時に重なると、潮位や波高はさらに高くなり、陸地に浸水する危険が増します。
 (潮の満ち引きに関係なく、台風・津波時に海や海岸に行くのは危険なので絶対にやめてください。)


【下げ潮】
 引き潮とも言います。満潮時から干潮時にかけて徐々に海水面が低くなり、サンゴ礁や干潟などの浅瀬が陸地に変わり、
 遠浅の地形の多い沖縄の海岸では、広い範囲を歩いて行き来できるようになりますが、
 潮の満ち引きを把握しないで沖側へと進んでいくと、先に説明したように上げ潮になった時に戻れなくなるおそれがあります。

 また、水深が浅くなることで、カヤックやミニボート、サーフボード等が海底に接触しやすくなります。

 さらに、下げ潮のときには海水が沖へ向かうことによってリーフカレントが発生し、遊泳者やSUP等が流される事故が発生しています。
 大潮の時期のリーフカレントは強い流れとなるので、特に注意が必要です。


 以上のとおり、潮の満ち引きによって、さまざまな危険が生じます。
 ハマオリなど潮干狩りを楽しむために、あらかじめ満潮や干潮の時刻、干満差を確認して
 帰る時刻を事前に決めておくことや、潮が満ちる前に戻れる範囲で行動することが大切です。
 そのほか、マリンレジャー事故防止のために以下の準備も大切です。

 ● 雨・風など天気予報もチェックして無理のない計画を
 ● 台風接近時、地震・津波発生時はマリンレジャーの中止と海からの退避を
 ● 防水パック入り携帯電話等で連絡手段の確保を
 ● 万一の落水に備えてライフジャケットの着用を
 ● 事故の際には海上保安庁緊急電話118番へ連絡を

 なお、潮干狩り等で魚介類を採ることが、地元漁業者の漁業権を侵害する場合があります。
 沖縄県では「沖縄県漁業調整規則」で何が違反かを定めているので、具体的な内容についてはこちらを確認してください。


■ 参考リンク先:
 ● 潮汐を調べるには
  ⇒ 第十一管区海上保安本部ホームページ 潮汐推算 沖縄県
  ⇒ 気象庁ホームページ 潮位表 沖縄(OKINAWA)
 ● リーフカレントについて詳しく知るには
  ⇒ 動画投稿サイトYouTube海上保安庁チャンネル
    【海上保安庁】海難防止啓発アニメーション~動画でわかる海難防止!離岸流編~
   
 (令和元年7月9日公開・第十一管区海上保安本部 製作)
  ⇒ 第十一管区海上保安本部サイト内「リーフカレントに気を付けよう!
    ※発生海域マップは「④ 注意海域をピックアップ!」をクリックしてください。

ウォーターセーフティガイド
 海上保安庁は、マリンアクティビティを安全に遊ぶための総合安全情報サイト「ウォーターセーフティガイド」をインターネットホームページで公開しています。
 
海の安全情報
 海上保安庁は、全国の灯台等で観測した風向風速、気圧等の気象情報その他海の安全に役立つ情報を、「海の安全情報」としてインターネットホームページで公開しています。
  

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