四方を海に囲まれた我が国にとって、「海」は海上輸送の交通路であり、水産資源等を生み漁業等の活動の場となっているだけでなく、海を仕事場としない国民にとってもマリンレジャーを楽しむ憩いの場として、昔から親しまれてきました。
　一方、我が国にとって「海」は、国境でもあり、海上で行われる我が国の治安や私達の安全を脅かすテロや密輸・密航、漁業秩序を乱そうとする密漁等、様々な犯罪が行われる恐れのある場でもあり、犯罪の未然防止や取締りを巡視船艇や航空機を用いて行っています。

　また、海上保安庁の業務は、全て海を通して世界の国々とつながっており、国際情勢と密接な関連の中で遂行されます。海上における安全確保のためには、諸外国の関係との連携・協力が必要不可欠なものとなっております。

　我が国の領海や排他的経済水域（EEZ）では、将来にわたる水産資源の安定的な供給を維持するため、外国漁船による操業が法令によって規制されているほか、EEZでは、周辺諸国との間に各漁業協定が結ばれ、これに基づくルールが定められています。しかしルールに従わない、悪質な外国漁船による違法操業により、我が国の貴重な水産資源が乱獲される事案が後をたちません。
　海上保安庁では、我が国の領海やEEZの漁業秩序を維持すべく、厳正な監視・取締りを行うとともに関係省庁とも連携し、外国漁船による違法操業の根絶に努めています。

　日本海の中央部の「大和堆：能登半島から北北西約300ｋｍ（海底山脈で東西の深さ2,000ｍ：浅瀬236ｍ）」と呼ばれる場所は、周囲に比べ水深も浅くイカやカニなどの日本海有数の好漁場となっています。※日本海の深さ3,796ｍ（平均1,350ｍ）
　近年、大和堆周辺海域では、北朝鮮や中国籍とみられる漁船が急増し、その一部が我が国の排他的経済水域で違法操業を行っており、同海域で操業する日本漁船の安全を脅かす状況になっています。
　このような状況を踏まえ、航空機による監視に加え、日本漁船の安全確保や北朝鮮漁船等の違法操業への対応のため平成29年7月上旬から大型巡視船を含む複数隻の巡視船及び航空機を同海域に派遣し、延べ1900隻以上の北朝鮮漁船等に対して汽笛や大音量の音声による退去勧告を実施するとともに、そのうち300隻以上に対して放水装置を実施し大和堆周辺に我が国の排他的経済水域から退去させるなどしました。
　平成30.5月下旬以降　北朝鮮漁船延べ496隻に退去勧告を出し、154隻に放水を実施し、我が国ＥＥＺの外側に向け退去させています。

【海の豆知識】国際信号旗
　国際信号旗は、海上において航海及び人命の安全に関する各種の状態が生じた場合で、特に言語的障害があるときにおける信号の方法と手段を定め、船舶間での通信に利用される世界共通の旗であり、その使い方は国際信号書によって定められています。※国際信号旗（5色：赤、青、黄、黒、白）

　船舶の通信のために世界共通で使われる旗が「国際信号旗」で、アルファベットの文字旗26枚、数字旗10枚、代表旗3枚、回答旗1枚の合計40枚で構成されます。
「国際信号旗」を掲げておけば、その船の状態（火災・操縦困難・試運転、投網中など）を周りの船舶に知らせながら航行・停泊することができます。

　言語の違いなどに関わりなく意志の疎通をはかるために、あらかじめよく使う文例を1～3文字の記号に割り当て、国際的に統一したものを「国際信号」と言います。
　その文字と信号の意味などまとめたものが「国際信号書・ International Code of Signal 」で、「国際信号」は、主に旗を使った旗旒（きりゅう）信号として用いられる他、無線電信や無線電話でも使われることがあります。「国際信号書」は、1969年から使われ始めました。
「停船命令」は、「視覚的又は聴覚的な停止信号を当該船舶が視認し又は聞くことができる距離から発する」ものとされており、無線のみによる停船命令では、この要件を満たさないと考えられています。

●あなたは、直ちに停船されたい。 　 視覚的信号 　旗りゅう信号　L旗 　発光（光）信号　「Ｌ」：・－・・ 　聴覚的信号 　汽笛・サイレンによる信号　「Ｌ」：・－・・

　この様に、船舶は無線によるもののほか、様々な方法で意思疎通を図ります。

　国際条約の中で、「沿岸国は、自国の法令に違反した外国船舶を追跡することができる。」ことが規定されています。（国連海洋法条約第111条「追跡権」）
・「追跡」が成立するためには次の３つの要件が全てそろっていなければなりません。
　①相手船が自国の法令に違反したと信じるに足りる理由
　②相手船が自国の領海内にいる（注１）
　③停船命令を実施している
・「追跡」が成立した場合は、それが中断されない限り、相手船が領海の外に出ても「追跡」を継続できます。（注２）
　※注１：違反した法令の内容により、排他的経済水域（EEZ）、接続水域内にある船舶も対象となります。
　※注２：一般に「継続追跡権」と呼ばれています。