1 事故防止対策

1) 適切なダイビングプランの策定

 ダイビングサービス提供者、インストラクター及びガイドダイバーにおいては、事前にダイビング参加者の技術レベル、ダイビングスポット、気象・海象等に関する情報の収集に努め、最も適切なダイビングプランを策定する。特に、 海潮流については、十分な調査を実施し、必要に応じてダイビングの中止やエントリー開始時刻の調整を行う

2) 事前の十分な打合せ

 ダイビング参加者側と監視する側において、 事前にエントリー及びエキジットの時間と場所、潜水コース、呼び戻し信号 など緊急時の対応策等について、また、ダイビング参加者間においても、事前に 水中でのコミュニケーション方法、緊急浮上法、グループとはぐれた場合の措置等について 、それぞれ 十分な打合せを実施する

3) 適切なダイバーの監視

 ダイバーの監視は、漂流等の事故を防止するうえで極めて重要であることから、 ダイビングボートの操船者以外に専従の船上監視員を配置し 、潜水時間の管理やダイバーの発する気泡による位置の確認等、 事故の未然防止に努める 。なお、太陽に向かっての逆光での監視は、見落としを生じる可能性が高いことから避ける。

4) ドリフトダイビングにおける注意

海潮流の影響が大きい海域における ドリフトダイビングにおいては 、ダイバーを見失うことがないよう 複数のグループによる同時潜行は避ける
また、現場海域に精通した ガイドダイバーの配備や船上監視員の増強等、安全対策の一層の強化を図る

2 事故発生時等における対応

1) ダイビング参加者

  1.  漂流事故発生時における捜索活動を容易にするため、オレンジなど常に 目立った色のウェットスーツの着用に心掛けるほか 、巡視船艇・航空機等の捜索勢力に対する 信号用として 、市販されている 以下のような物品の携行に努める
    • 昼間用 : 手鏡、海面着色剤、レスキューフラッグ等
    • 夜間用 : ストロボライト、蛍光ライト、反射テープ等
    • 昼夜間用 : ホイッスル、エアーホーン、救命信号筒(連発式)
  2.  漂流事故に遭遇した場合、四囲の状況を的確に判断し、陸岸等への自力上陸の可否を早期に決定する。なお、自力上陸が困難と判断される場合においては、BCジャケットの活用を図るほか、 ウエイト、残圧の無くなったボンベ等の重量物については 、躊躇することなく 投棄し、浮力の確保及び体力の温存に努める
  3.  集団での漂流においては、離れ離れにならないよう ロープ等でお互いを連結し、救助勢力の到着を待つ

2)ダイビングサービス提供者等

 捜索・救助活動の遅れは、時間の経過とともに捜索海域の拡大を招き、発見救助の可能性も低下させることから、エキジット時間を過ぎてもダイバーの所在が確認できないなど、 遭難そのものが不確実な段階であっても、直ちに 海の緊急通報用番号 「118番」を利用して 、海上保安庁に関連情報を 速報する
このため、 ダイビングボートには 、活動海域に応じた 有効な通信設備 (携帯電話の不感地帯等においては、無線電話、衛星携帯電話等) を装備する

事故概要

発生日時
平成25年8月26日  午後2時半頃
発生場所
東京都小笠原諸島東島の東側海域
事故概要
 事故者4名はダイビングインストラクター1名(男性)及びダイビング客3名(男性1名、女性2名)であり、他のダイビング客と共に午後2時頃から、前記場所でボートダイビングを開始した。

 ダイビングを行なった場所は、南北方向に切込みの入った岩の間を潜るポイントであり、ダイビング場所付近の海域は潮流があるものの、そのポイントは潮流の影響を受けにくい上、ポイント北側は、海底地形から潮流の影響をほとんど受けないため、北側からエントリーして南側でエキジットするのがの方法であった。

 ポイントの北側から他のダイビング客がエントリーした後、事故者4名のグループがエントリーしたが、ダイビング客1名が上手く潜水できなかったことからインストラクターは、海面でこのダイビング客の状況確認及び潜水支援を行い、他のダイビング客2名は、インストラクターから離れないように付近海面で待機していた。

 しばらくして、全員潜水可能となったため、潜水を開始するも、潜水支援等を行っていた間に、潮流により北方向へ流され、インストラクターは海底の目標物(場所)を確認できなくなっていた。

 午後2時半頃、インストラクターの判断で海面に浮上したものの、ダイビング船は、遠く離れていたことから、漂流状態でダイビング船に発見されるのを待つこととした。

 その後、ダイビング船から、エキジットポイントに事故者4名が浮上せず、付近海域の捜索をするも発見に至らないことから、午後3時半頃に海上保安庁へ救助要請を行い、他のダイビング船等も加わり大規模な捜索が開始され、午後4時半頃、ダイビング船がポイントの北東約2300メートルの海上において漂流中のダイバー4名を発見、全員を救助した。
事故当時の天候
 晴れ、北北東の風4メートル、波高0.5メートル、うねり2メートル、潮流北へ約0.6ノット、視程良好
参考事項
ダイビング用エアーホーンを所持していたが、失念していたため使用しなかった