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八戸管内の地勢的特性

八戸海上保安部管内全般

●尻屋埼~魹ケ埼
 〇概要

 尻屋埼~魹ケ埼の海岸は、南部に久慈湾、宮古湾などがあるほかは、一般に出入りが少ない。 久慈湾以北はおおむね砂浜や磯浜で、その陸部も標高は一般に高くはないが、久慈湾以南はがけの岬角が多く、陸部には高さ1,000m以上の北上高地が南北に連なっている。
 沿岸の水深は一般に深く、20m等深線は八戸港の北方付近及び諸湾入部では距岸1~2Mにあるが、その他の所は距岸1M以内にあり、その外方には島や険礁はない。
 この沿岸には、むつ小川原、八戸、八木、久慈、宮古の各港則法適用港がある。

 〇気象
 尻屋埼では、年間を通じて風が強く、特に冬季の季節風は非常に顕著で、10m/s以上の西寄りの風が数日間吹き続くことがあるので、 冬季、この付近を航行する船舶は、気象通報などに注意する必要がある。
 夏季には南東風が卓越するが風速は弱く、付近の海上ではしばしば霧が発生し、航行に支障を与える場合が多いので、冬季の季節風と同様に注意を要する。

 〇航行上の注意
 尻屋埼~八戸港間を航行する船舶は、陸岸に沿って航行するものが多いが、乗揚げの要因と考えられるものは次のとおりであるので、 吹雪、霧などの視界の悪いときには、十分に陸岸から離れて航行するように、特に警戒を要する。
  
 乗揚げの要因
 1 中山埼付近の沿岸には、ときに津軽暖流の一分派の強い向岸流(約1.6kn)が見られること。
 2 尻屋埼~八戸港の海岸は、弓形に浅く湾入していること。
 3 尻屋埼~八戸港の沿岸では、20m等深線が距岸1M以内の所もあり、20m等深線以遠は急深であり、水深の変化によって危険を察知し
  たときは、既に避航手段が手遅れである場合が多いこと。

●尻屋埼~鮫角
 〇概要
 尻屋埼~鮫角の海岸は、ほとんど出入りがなく緩い弓矢を成し、クキドウノ埼及び中山埼の付近にがけがあるほか、一帯は砂浜である。ことに中山埼以南の砂浜の後方は低い砂丘で、所々に湖沼の流出口があり、平野に続いている。
 10m等深線はおおむね距岸0.5M以内にあり、その内方は一般に急浅であり、暗岩が散在する。距岸1M以遠には、水深10m以下の浅所はない。
 距岸2M以内に、定置網があるので注意を要する。

●鮫角~魹ケ埼
 〇概要

 鮫角~魹ケ埼の間には、久慈湾、野田湾及び宮古湾などがあるが、概して海岸線の屈曲が少ない。
 この沿岸は一般に深水で、湾入部を除き距岸1M以遠に険礁はないが、海岸近くには岩礁が点在し、夏季には海上平穏のときでも、うねりが激しく破浪する。
 特に階上灯台(40°27.1′N 141°40.9′E)~八木港間の距離1M以内に多くの暗礁が散在し、海底が非常に不規則である。
 八戸港内の蕪《カブ》島~牡鹿半島間の沿岸は、三陸復興国立公園に指定(平成27年3月31日指定)されている。また、この国立公園内北 部の明神埼~魹ケ埼間の約14Mは、沿岸は変化に富み距岸0.5M以遠に険礁はなく、深水である。
 この沿岸は、夏季、特に6、7月には霧が多いうえにイカ釣り漁船が、また、秋季には、サンマ漁船が多いので注意を要する。

尻屋岬港

 〇概要
 尻屋埼の南西方約1.6Mにある港で、避難港でもある。主に石灰石、セメントなどを取り扱う港で、避泊船舶も多い。弁天島 (41°24.9′ N 141°26.2′E、高さ20m)から南西方へ延びる防波堤(東)と、尻屋岬港東防波堤灯台(41°24.6′N 141°25.6′E)の南方に防波堤(西 )、東方に内防波堤がある。なお、北西~北の風の強吹時には波浪が侵入する。
  
 〇錨地
 防波堤と突堤で囲まれた泊地内は、水深5~10mの所が錨かきは良いが、錨地が狭いため、錨泊には注意を要する。

むつ小川原港

 〇概要
 この港は、尾駮《オブチ》、鷹架《タカホコ》、新納屋地区及び東防波堤沖の外港地区と4区域に分かれる。尾駮沼の西方にむつ小川原国家石油備蓄基地がある。港内は流砂により水深が減少している箇所がある。東防波堤の北西側は水深が減少しているため、出入港に際しては同防波堤の南側を航行する方がよい。
  
 〇航行上の注意
 港の南側には、米軍の射撃訓練水域が設定されているので、注意が必要である。

八戸港

 〇概要
 この港は、第1区~第3区に分かれ、東航路、西航路の2航路が定められている。
 外側に中央防波堤及び第2中央防波堤が築造されたので、外海の波浪を防ぐようになったが、東寄りの風が強吹するときは、返し波が強く、西航路の通航ができないことがある。
 また、北寄りの風が強吹するときは、第1区及び第2区内にうねりが侵入し係船が困難になることがある。
  
 〇気象
 年間を通じて西南西からの陸風が最も多い。低気圧が八戸港の南側近くを通過するときには、東寄り又は北寄りの風が強吹する。
 6~8月にかけて濃霧がかかることがあり、視界が一日中閉ざされることもある。冬季、全く視界を閉ざすような吹雪の日が数日間あるという。

 〇信号
 新井田川水面及び旧馬渕川水面に出入航する一定の船舶は、八戸海上保安部八戸信号所の管制信号に従って航行しなければならない。(港則法施行規則第20条の2、別表4)
  →八戸信号所リーフレット

 〇航行上の注意
 東寄りの強風時に防波堤の外側はうねりや波浪が大きく、圧流されて沿岸に乗揚げる事故が発生している。
 
 〇入港上の注意
 港内の小根(40°32.6′N 141°33.2′E、水深3.2mの岩礁)は航路の近くにあり、ほとんど破浪しない。
付近には浅瀬もあり錨泊には注意を要する。
 八戸港付近は、漁船の海難が多い所である。特に夏季の濃霧期はイカの盛漁期にあたり、沖合で夜間操業して、早朝に帰港する漁船が多い。
 この時期に入港する大型の船舶は、漁船の出入りの多い朝夕を避け、また、夜間この付近を航行する船舶は、漁船の操業水域を避けて、その外側を航行するのがよい。
 港内には険悪物が散在しているので注意を要する。
 大型LNG船の入出港に伴い、中央防波堤と八太郎北防波堤の間から八戸港ENEOSエルエヌジーサービス八戸LNGターミナル外航船桟橋の水域が航行・錨泊自粛区域となる。
 →航行・錨泊 自粛区域図

 〇錨地
 白銀西防波堤及び同北防波堤の南側は錨かきが良いが、泊地が狭く、また、北寄りの強風時には、うねりが防波堤を越えて侵入するので注意を要する。荒天時以外は、第3区で錨泊することが望ましい。

八木港

 〇概要
 港湾法上の地方港湾である。鮫角~久慈湾口間の沿岸では、小型船の避泊地となる唯一の港である。この港は小湾を成し、湾口の両角から沖の方へ延びる岩棚を利用した北港第1防波堤と南港第1沖防波堤及び南港第2沖防波堤とがある。また、港奥に八木港導灯(40°20.8′N 141°45.8′E(前灯)、40°20.7′N 141°45.7′E(後灯)、2灯一線236.7°)がある。港の北部に北港、南東部に南港の両船だまりがあり、この間の中央部は水深約6m、底質砂と泥で錨かきが良い。しかし、東寄りの風が強吹すると激浪が侵入するので注意を要する。北港船だまり内の水深は、約5.5m以下である。南港船だまり内の水深は約3mで、東側に南港防波堤(内側を係船岸として利用)がある。荒天のときでも、小型船の安全な避泊地となる。
 この港の付近は、6~8月に濃霧に閉ざされることが多く、また、南港船だまりは入口が狭いうえ、岩礁が入口近くまで張り出しているので、初入港時の視界の悪いときや東寄りの風の強いときには入港を避けた方がよい。

久慈港

 〇概要
 久慈湾のほとんどを港域とする。港口は東に広く開き、太平洋に面しているため、風波にさらされ絶えずうねりが侵入し、また、底質も砂混じりの岩のため、安全な錨地とならない。
 港は、港内南西部にある玉の脇地区とその北方にある諏訪下地区、半崎地区とに分かれ、諏訪下地区は堀込港(船だまり)とその東側の外港地区(大型船用)とがある。
 諏訪下地区の西部港奥の船だまりは、東寄りの強風時にも安全であるが、船だまり内、港口とも狭く、水路も屈曲しているので注意を要する。特に北西風時には、水路付近で波が高いという。また、10、11月のサバ漁最盛期には港内は漁船で一杯になり、係船できないことがあるという。初入港時は、夜間の出入港をしない方がよい。
  
 〇気象
 春季~初夏には東寄りの風が多い。濃霧は5~7月の間が多く、特に弱い東風が吹くときに多い。
  
 〇入港上の注意
  1 湾口防波堤の築造に伴い拡張工事が実施されているので、湾口の入口を確認して入港する必要がある。
  2 港内には険悪物が散在しているので注意を要する。

                                          書誌第101号本州南・東岸水路誌
                                          書誌第102号本州北西岸水路誌から引用
                                          無断で引用・転載することを禁止する

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