日中の外観と並び、暗い海に一筋の光を放つその姿は、とてもロマンチックで魅力的です。夜間、光を放射しながら回転するレンズの輝きは、大きな宝石のようだとさえ言われています。
出雲日御碕灯台の光は、はるか沖合を行く船にも視認できなければいけないことから、光源を巨大なレンズにより強力なものにしています。またそれは、出雲日御碕灯台の光であると明確に識別されるよう、単純・単調な光ではなく、灯色と閃光周期を違えて組み合わせた、規則的な固有の光(これを灯質と言います)になっています。例えば、出雲日御碕灯台の灯質は20秒間に白2閃光・赤1閃光、美保関灯台なら12秒間に白1閃光となります。
こうした閃光は、光源を中心にレンズを回転させることによって作り出されます。すなわち、光源が遮蔽板または彩色ガラスに当たるタイミングで、閃光・灯色・周期が決まり、レンズによって拡大された強力な光線となって夜の海に投射されます。したがって、灯台の光は近くで見ると単なる点滅には見えず、一筋の明るい光芒(放射する光)が夜空をぐるりと一周し、それが何回も繰り返されるように見えます。
第一等フレネル式閃光レンズ
フレネルレンズは、1822年にオーガスチン・フレネル(仏)により考案されたもので、凸レンズ(屈折レンズ)とプリズム(反射レンズ)を組み合わせることで、レンズの重量を軽減し、光を効率よく投射することができます。
レンズは光源からレンズまでの焦点距離が長い順に、第一等から第五等まであります。出雲日御碕灯台のレンズはフランスのバビエー社の製品を輸入した「第一等フレネル式閃光レンズ」と呼ばれるものです。毎20秒に白2閃光と赤1閃光を発するため、白光用の小レンズ2個と、赤光用の大レンズ1個で構成されています。大小いずれも直径1メートルの凸レンズを中心に、同心円状にプリズムが上部に26層、下部に16層組まれており、高さが2.5メートルあります。赤光用の大レンズは、赤フィルターによって減衰した光を補うため、白光用より大きく、幅3メートルあります。
水銀槽式回転機械
レンズの総重量が約3トンもある出雲日御碕灯台では、水銀の比重が非常に高いという性質を利用して、水銀約23リットル(約320キログラム)が入った容器(水銀槽)に、レンズを浮かべて小型の電動モータにより回転させています。これは「水銀槽式回転機械」といい、潤滑油やベアリング方式よりも摩擦が少なく、効率よくレンズを回転させることができます。
昭和35年まで、レンズを回転させる動力として分銅が落下するときの重力を利用していました。灯塔の中心部に設けた高さ約38メートルの筒内に、500〜600キログラムの分銅を鋼製のワイヤーに吊り下げ、夜間1〜2回巻き上げました(1回の巻き上げで8時間回転させることができたといわれています)。灯室から1階まで続く灯塔中心部の鋼製の筒に当時のなごりが見られます。 |